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かさぶた。

by みさとん

18歳、いつだったか。

"もっと強くなりたい。"
そう呟きながら、心の中では絶叫しながら、雨に打たれて泣きながら自転車を漕いだことがある。

挫折・失恋・絶望。

たぶん、こんな言葉で押しつぶされそうな夏だった。

生きていくということは、いろんな経験をすることでありその度に新しい感情を心のど真ん中に植えつけられることなのかもしれない。

植えつけられた感情は経験とともに心の奥底に今もまだ眠っている。まるで樹齢何年の樹のように。少しずつ少しずつ積み重なって大きく太く、そうして人生に厚みが出る。


年輪には何もいい事だけが積み重ねられるわけではない。思い出したくない風景も一緒に積み重ねていく。


強くなりたいと願ったあの日から何年もの月日が経った。
今はもう、"強くなりたい"とは思わない。


人は自分自身の感情と経験で年輪を積み重ね、大きい太い幹をつくっていく。成長するとは、"強くなる"とはそういうことなのかもしれない。あの、どっしりとした、貫禄。


"かさぶた、とっちゃダメだよ。血出るよ。"

そう言われて育ったしわたしも子供にそう言うだろう。
でも、気になる古傷。自分でもどうなってるのか覗きたくなるのが古傷。

かさぶたの下にはまだ生々しい傷と真っ赤な血が待ち構えているのに剥がしたくなる。単なる傷ならいい。失恋の痛みや人生の絶望に同じ感情が向けられたとしたら、その生々しい傷でさえ愛おしく思う人間に狂気さえ感じる。


涙を流してもいい。
大雨に打たれてもいい。
人に笑われてもいい。


かさぶたは、剥いて傷ついて血を出してまた次の糧にすればいいのだ。

かさぶたが治る頃には、自分の幹もまた一回り厚く太くなっている。


昔の傷ついた思い出に、傷ついた自分に、無理に蓋をしなくても

人はそうやって、強くなっていくんだ。


みさとん
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