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染められた雲と線香花火に。

by みさとん

夕方の自転車。

雲が、綺麗。

空を色とりどりにするのは夕日。
オレンジに、ピンクに、紫に、染められていくのは雲。


半袖半ズボン。ピンク色のビーサンを履くわたしは何とかその風景に溶け込みたいと言わんばかりの格好で風をやさしく撫でていた。
日焼けなんて気にしない。全身を包む風が、気持ちいいんだ。これ以上の欲しいものなんて、なかった。


寂しかったら何をする?
夢の中でもいいからと願って眠るのかな。
部屋の電気を暗くして静かに泣くのかな。
何かにすがるように言葉を探して、本の文字を追うのかな。


会いたくなったら何をする?
何度もやり取りをしたメッセージを見返すのかな。
電話の発信ボタンをなでるように触るのかな。
目を閉じて、誰にも教えたくない秘密を思い出すのかな。


線香花火がしたい。

暗い静けさの中に生まれる光は、切ないほどに、愛おしい。

刹那的に永遠で。わたしはその線香花火を、ただ見つめることしかできない。


綺麗。


そう感じるのは、ただ数十秒の永遠、だからかもしれない。

だから人が生きる姿は、

綺麗。

なんだ。


そういえば、

わたしは今を、生きている。


もし明日、大地震がきたら
もし明日、ミサイルが落ちてきてきたら


そんなことを考えると、ちゃんと会いに行かないとって思うのに

何時間眺めてたって通話の発信ボタンを押せない自分に、

それができない人間関係の終着点があることを知った。

”会いたい人には会いに行く”そう胸を張って言っていたのに。

そう思うたび、胸がぎゅうって締め付けられる。

このやるせなさに向き合うほど、わたしはまだ強くない。


涙のタンクがいっぱいになったら、溢れそうになるのを頑張ってこらえるだけ。
線香花を持つ自分の手を、わたしはただ見つめるだけ。


その光がもし永遠だったら、途端、綺麗だなんて感情は消えてしまうのかな。
それでも、寂しさと愛しさの間で生きていけたらいいな。


”記憶の中で、ずっと二人は生き続ける”


笑ったわたしを、きみは覚えていてくれるだろうか。

どんな表情をして、どんな声で、どんな気持ちを伝えたのか、
きみは覚えていてくれるだろうか。

わたしは、きみのすべてをふと思い出すことが、あと何回あるだろうか。


忘れてしまっても、

いつかきみを、わたしを、
すべてを忘れてしまっても

きっと。

わたしの一部となって、きみの一部となって、
きみが笑って生きていてくれたら。

そう思うことが、

記憶の中で生き続けるってことなのかもしれない。

その気持ちだけは、本物だから。



わたしはこの先、どんな顔して笑うのかな。どんな表情をして、生きるのかな。


七夕だった日と、願い事。


言葉なんて、願い事みたいなもの。
相手に届くといいな。届いたらいいな。くらいの気持ちがちょうどいい。

年に一度しか会えない。
ううん。年に一度でも会えたら嬉しいなんて思える相手がいる幸せを
わたしは噛みしめて生きられているかな。


人と人の関係なんて、最初はまっさらなサラ地だ。”大切”なんて言葉は、一緒に過ごした時間そのもの。

どれほど傷つけ合いどれほど幸せを分け合ったか。そんな感情をくっきり型とってくれる言葉を、きみと分かち合えたらいいのに。


言葉なんて、役に立たないときがある。
言葉が溢れて、なにも言えないときがある。

それでも、星が出る夜にきみがくれた体温は、"すき"なんて言葉を容易に引き出したね。

側にいたい触れていたいと思ったのは
きみが温かいから。

こんなわたしでも、温かいきみの体温を感じることが、できたから。



きっと、この夏も空を見上げて。

いや、この夏は、

大きな打ち上げ花火を、お腹の奥まで響きわたるような色とりどりの大きな花火を、

隣で見たいと思える人と”大切”なんていつか思えるような時を、過ごしたいな。



やっぱり。

この夏…でなくても、いいかな。

染められて染める、願い事。


みさとん
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