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さよならと言えないこと。

by みさとん

誰かとお別れをするときは


さよならと言えないことの方が多い。


さよならを言うということは、別れを意識するということ。そんな覚悟がないから、人は簡単にさよならを言わない。


じゃあ、

さよならを言っていたら、何か変わったのだろうか。


飲んだ居酒屋の帰り。学校の校門をでた瞬間。改札の分かれ道。じゃあね。またね。そう笑顔を交わして突然いなくなる相手に、残された人は涙を流すことしかできない。


さよならを言えなかったとは、


そういうことだ。

先生は、私の夢を応援してくれた大切な恩師の一人だ。”一人でドイツに行ってこの目で全て見てきたいんです!”できっこない、危なすぎる。無謀。そんな言葉に圧迫されたとき、藁をもつかむ思いで研究室に駆け込んだ。




”怖くない?” 


先生が聞く。


”不思議と怖くなくて、
むしろワクワクしてます” 



”それなら、行ってきなさい。”



その一言で、どれだけ前を向けたか。

英語の翻訳も、飛行機も宿の手配も、外国での過ごし方も、何もかも相談した。先生は本当に英語が好きで、自分の道を迷わず進んでいる人なんだなと感じたこと。


それが私にとって一番の応援だった。

どうして蝉の音は、いつも大事な人を連れ去ってしまうのだろう。ぬるくなった西瓜も、気だるい蚊に刺された痕も、


だから、夏は。



涙が、こぼれること。

声をあげて、泣くこと。

立っていられないこと。

全部が、わからなかった。わかりたくもなかった。


だって、言ったじゃん、先生。

赤ちゃん産んだら家に遊びに来てねって。
卒業式はいけないけど、ごめんねって。
みさとは、ほんとに凄いよって。
これからも頑張ってねって。


あんなに笑顔でたくさん褒めてくれたじゃん。



もう、会えなくなるなんて...


そんなの、聞いてないよ。

目に光がなくなったとき、この世界がどこか他人事のようにふわふわして見えた。


いつもと変わらない優しい風と、いつもそこにある風景はなんて残酷なのだろうと思う。時間は、止まらないし世界は動き続けていた。突き付けられたものが現実だと知ると、長く生きている人を尊敬した。

あと何回こんな出来事が起きるんだろう。わたしはさよならを乗り越えるために生まれてきたんじゃない。

腹が立つ。涙がこぼれる。ごめんねと笑顔で言う先生がわかるから、もっと悲しい。

夕飯。ご飯を食べながら突然涙をぽろぽろとこぼしてしまった。

どうしたの?お金落としちゃったの?旅行行けなくなっちゃったの?ころんじゃったの?母親が聞いてくる全部に首を横に振る。それくらい小さな子が突然泣いてしまうかのような泣き方だったのだろう。


言いたいけど、言えなかった。口に出してしまったら本当になってしまいそうで、でも時は止まらないことを知っているわたしは、”えいごのせんせいが、しんじゃったんだって” 

ご飯と一緒に涙を食べる。涙の味なんて、わからなかった。

先生。わたしは、すごく悲しいです。




今はまだ、笑えそうにないです。

切り替えて、前向きに考えることも、





まだできそうに、ないです。




でも、

みさとは、本当にすごいよって、


また笑顔で褒めてもらえるように






頑張りたいって思うんだと思います。







私の中には、




いつも笑顔で、
応援してくれる先生の顔しか、
残っていないから。

またいつか、心から笑えるかな。
ちゃんと、乗り越えられるかな。




さようなら。先生。


何の言葉も役に立たない。
音もいらない。
自分の言葉だけ、音がした。

みさとん
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