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あ。ブルーモーメント

by みさとん

あ、つき。月

あ、ブルーモーメント


ビルを出た帰りの電車は黒を覆って小さな画面にそのまた小さな文字に追われてどこかへ帰ろうとする人々で溢れていた。

そんなことにも気づかなかった。

日が沈み世界が青に包まれるあの時間。
それに、月を見上げること。

悲しみが、水を含んだ絵の具が紙にぽとりと落ちたような模様でじわりと広がった。


ああ、わたしの悩みなんて
そういえばちっぽけだった


この世界は広くて

わたしはそのたった一人ちっぽけな人間で

できることなんてほんの小さくて

だから誰かと愛を交換して

誰かと不安を溶かしあって

生きているんだった

そんなにたくさんはできない

できなくていいから

やれるところまでやろう

きっと、最後はできるようになるから


そんなふうに思い直して電車の中へ、黒くて狭い世界に乗り込む。

電車を降りると、すっかりブルーモーメントは終わっていて、漆黒の空に痛いくらい黄色く澄んだ月がこちらを見ていた。
わたしが気付こうが気付かまいが、ただそこにいる、月。


黒い空に黄色い月
青い空に白い月


目の前の仕事だけを見て生きている、こんなふうに何もかもを感じずに前に進む自分でいいのだろうか。

空や雲や星が好きで旅に出るのに、毎日の風や夕日や雨の音に耳を傾けずにわたしは幸せなのだろうか。


そう思ったら、いてもたってもいられず

旅するように知らない街を歩いてみた。


こんな青があるんだ。

ろうそくが塗られた和紙に映る写真は、一言に一つの色に括ることができない。繊細で、でもはっきりと自分自身を見つめる強さのある存在感。


あんな青があるなら
こんな色のわたしがあってもいい。

何故だかそうココロに浮かぶ。


居場所をつくってあげよう。この世界にひっそりと、でも確かに居る自分の色を。

自分の色を見つめて認める器を持つことが今のわたしのやるべきことのような気がする。


チリンチリン
チリンチリン

木漏れ日に目を細め新緑と木の幹に視線を移す。楽しい。空が青くて葉っぱが緑で、世界を優しく生きてる自分が好き。

一緒になって目を細め笑うきみは、またひとりでにどこか気の向くまま行ってしまうから、いつも通りのわたしたちの旅が心地いい。


絵馬があった。
ここに、たくさんの人の願いがあった。
誰かが誰かを想って書く願いばかりで

みんなが幸せでありますように

そんな願いが自然に溢れ出た、昔訪れたあの国のあの教会を思い出す。

いや、本当はあのときの自分を思い出したのかもしれない。そういえば、わたしはいつだって



ココロがハダシになる。流れる水のように変幻自在に色や形を変えて生きていたい。


そんなことを考えてたら、
あ。ブルーモーメント


今日は気づけた。
夕方の、世界が青く染まるこの時間。


みさとん
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