LOG IN

過ぎた七夕への願い。

by みさとん

 ”早く今が過ぎればいい。”

本気でそう思っているのか適当に言っているのかわからない、退屈そうに笑う瞳を覗き込みながら、"最近どんどんかっこよくなっていくなぁ。"なんて思わず笑みがこぼれた。好きだからかっこいいのか、かっこいいから好きなのか。前者だとわかっていながら恋をするのは、なんとも幸せ。

 大きなガラス窓に移る景色を見上げる。薄く広がる雲と水彩絵の具でふわりと色を付けたような空の色が優しい。

 長い長いわたしの話を、うんうんと聴いてくれた後、前向きな気持ちになれてよかったね、とぽつり一言。本当に思ったことしか言わないきみの笑顔付きの言葉だったからこそ、嬉しかった。

 きっと彼にとっては、私がどんな仕事をしようがどんな大きいことを成し遂げようが、それはさほど重要ではないのだろう。元気でいてくれればそれでいいのだ。それが彼自身から伝わってくるから私の身体を軽くするし、時に無理をして頑張り過ぎてしまう姿に心配をかけているなと嬉し苦しい気持ちになる。 私の笑顔が本物だから安心したのか、きみの笑顔が柔らかいのは気のせいではない気がした。やっと元気になったよ。それを一目散に言いたくて、見せたくて、きみに会いに来たんだから。

 紅茶の透き通るような味に落ち着く。気がつけば外は深いブルーモーメントを過ぎた頃だった。時間が柔らかくなったような、優しい空間。

 きみの好きな話しをした。W杯はどこの国が優勝するとか嬉しそうに分析したり、もう面白いサスペンス映画は無いなんて嘆いてみたり。コロコロ変わる子供みたいなきみの表情に、どうしてそれが好きなの?とか、それってなに?とか、ついつい質問したくなってしまう。私は、「好きなことを嬉しそうに話しているきみ」を見ているのが好きみたい。嬉しそうな悔しそうな顔をするきみを見ているのが楽しくて、可愛いくて、笑いがこらえられず幸せな気持ちをおすそ分けしてもらっているみたいだった。

 もし、「好き。」と伝えたら、その1秒後、きみはどんな顔をするのだろう。少しでも嬉しい気持ちを届けられるかな。それとも、その素直な表情を曇らせてしまうかな。

 ”今がずっと続けばいいのに。”

 この温かい気持ちに名前を付けるなら、ありきたりだけれど「一緒にいるから幸せ」なのだろう。「言葉」ではなく、「行為」で愛情が伝わってくる彼といる時間がとても好きだ。それでもいつか、私が言葉にするよ。愛情に輪郭をつけるように、柔らかいクレヨンで不器用な線を描きたい。

 オレンジ色のランプが灯る。優しい音楽が木製の店内に流れるのを感じながらきみを見つめるから、ふわふわと温かい気持ちに包まれる。

 "いつかきみを支えられる人に、なれますように。"

 過ぎてしまった七夕へ。短冊に願いを込めた、夏の夜空に。

OTHER SNAPS